「Et quacunque viam dederit fortuna sequamur.」(Vergilius)
《運命がいかなる道を示そうと、ただその道を行かん》
75.32年周期で地球に接近する短周期彗星、後の「ハレー彗星」(1P/Halley)について予言した「エドモンド・ハレー(Edmond Halley)」が、1692年に「イギリス学士院(British Academy)」で地球には3つの空洞があると発表した「地球空洞説(The Hollow Earth Theory)」。
「地球空洞説」では、地球の内部の大気は明るく、おそらく人が住める(住んでいる)のではと考えられ、北極や南極に見られるオーロラは地下内部の発光性ガスが地表に開いている穴から漏れたものだと推測されました。
古くには紀元前の哲学者「プラトン(Plátōn)」が、空洞が広がる地底世界の存在を示唆し地球の中心には神がいると述べるなど、地球が球体であると認識される近年までに様々な学者などによって数多くの「地球空洞説」が説かれました。
また、「地球空洞説」を題材にした多くの小説や映画などが生み出されています。
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「immanis pecoris custos, immanior ipse!」(Vergilius)
《恐ろしい獣の番人は、番人自身も恐ろしい!》
地球のタイムカプセルとして、絶滅した太古の植物や恐竜(巨大な爬虫類)などが、地下空洞のどこかで生きながらえているのかもしれません。
地表の人類とは進化が異なる地底人が、何らかの文明を築いている可能性もあります。
もしくは、宇宙人の巨大UFO基地や先の大戦の生き残りが地下帝国を築いているなど、地球の内部には多くの謎と話題に満ちています。
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「La science, mon garçon, est faite d’erreurs, mais d’erreurs qu’il est bon de commettre, car elles mènent peu à peu à la vérité.」(Jules Verne「Voyage au centre de la terre」1864)
1863年5月24日の日曜日、骨董店で購入した古書に挟まっていたルーン文字で記された暗号文が書かれた羊皮紙を見つけたことで始まった、「オットー・リーデンブロック教授(Le professeur Otto Lidenbrock)」と甥の「アクセル(Axel)」、そして案内人「ハンス(Hans)」の地球の中心へ向かう旅を記した「地底旅行(Voyage au centre de la terre)」(Jules Verne,1864)。
3人は、さまざまな困難に立ち向かいながら少しずつその真実に近づいていき、ついには地球の内部に広がる神秘な世界を目にします。
そして、旅の終盤には絶体絶命の危機が訪れます。
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「Quoi! Vous croyez encore à quelque chance de salut?」
「Oui! Certes oui! Et tant que son cœur bat, tant que sa chair palpite, je n’admets pas qu’un être doué de volonté laisse en lui place au désespoir.」(Jules Verne「Voyage au centre de la terre」1864)
「じゃあ、助かるチャンスがあると思っているんですか?」
「あたりまえじゃ!人間は心臓が鼓動を打つかぎり、肉体を動かすことができるかぎり、希望を失ってはならん。絶望に身をゆだねてはならん。わしはそう思うぞ」(光文社「地底旅行」 訳:高野優)
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「On rencontre sa destinée souvent par les chemins qu’on prend pour l’éviter.」(Jean de la Fontaine)
歩む道に立ち塞がる運命。
その運命に立ち向かうのか避けるのか、その決断に対し確固たる意思を持つことが、自身をさらに成長させるのだろうか。
地球の中心へと向かう旅を記した冒険物語「地底旅行」は大団円を迎えますが、数々の試練と発見を通して成長した「アクセル」を見届ける物語でもあります。
運命に立ち向かっても、次なる運命に出会う。
運命を避けても、結局は運命に出会う。
出会う運命の大きさに関わらず、自身にとっての新たな発見を求め、未知の世界に飛び込んでいく熱い意思を、この心臓が鼓動を打つかぎり持っていたいものです。
写真・文 / ミゾグチ ジュン